本記事ではピンクパンサー窃盗団の組織構造を扱います。
階級またはそれに準ずるものがあるのか?
決まった指示系統があるのか?
それらを概観する試みとでも考えて頂けたら幸いです。
階級の制度
ピンクパンサーの組織構造について発言をしている人物は複数いますが、全て断片的です。
個々人の認識のズレや誇張の可能性を無視するのは危険ですが、私には検証するだけのスキルがありません。
これから述べる組織構造は、私の嘘を含んではいませんが間違いを含んでいる可能性のあるものです。
意思決定の主従
まず上層部と呼ぶべき中核グループ。
彼らの仕事は、犯行計画や金銭・盗品の管理方法の決定です。
彼らはセルビア・モンテネグロ国内にいるとは限らず、各国の拠点にいることもあると述べられています。
その下はいきなり実行役レベルとなります。
スタンダードなメンバーの構成は…
・宿泊先など、旅程の調整役
・犯行場所の下見役
・凶器で場を制圧する役
・ショーケースを破壊する役
時には、金庫破りのプロなど高度なスキルを持つ人物も加わります。
実行役レベルは知人を呼んで組織する場合もあれば、全く素性を知らない者同士で構成されることもあります。
彼らはたいてい、通常の暮らしをしている一般市民にすぎません。しかし招集がかかると実行グループの中に招き入れられます。
そして一仕事終えると、また通常の暮らしに戻る。普段の彼らは病院の清掃員だったり、農家だったりするのです。
ケンカやゆすりに明け暮れるギャングとの違いはここにあります。
しかし実行役たちはグループごとに異なるスタイルを持っているようで、車で店に突っ込む手荒なグループもいれば、麻薬の取引に手を染めるグループも存在します。
グループごとの違いが「上層部」に指示されてのものか、現場の裁量で好きにやっているのかは不明です。
互いの繋がり
「メンバー同士の繋がりは薄く、リーダーはいない」
元パンサーやそれに近しい人々はこの言葉をよく使います。
メンバーの繋がりの薄さは前述した通りですが、リーダー不在というのは奇妙です。
おそらく上層部の存在を否定する言葉ではなく、「実行役レベルの中にヒエラルキーや主従関係はない」ことを指しているのだと思います。
その裏付けとなるかはわかりませんが、グループ内での恐喝や仲間割れといった話題は一切確認できませんでした。
取り分で揉めたり、下克上を狙った争いをするような関係にないということですね。
逮捕されたパンサー達のほとんどは、情報提供を拒みます。
これをギャングの絆と解釈することもできますが、おそらく喋ることが本当にないのでしょう。
あるメンバーによる言葉がうまく要約しています。
「お互いを家族と呼んでいるが、上司や仲間が誰なのか知らない者もいる。上司からヒントをもらうこともあるが、実際に会うことはないので自分が組織のどの階層にいるのかわからない。」
上層部と実行役の距離?
誰が実行役で誰が上層部なのか…これも不明です。
一方的に指令を下す人物が確認されている訳ではありません。そのため、ピンクパンサー関係者から語られた「上層部」の概念は裏付けのないものです。
上層部→実行役という指示系統は本当にあるのでしょうか?
ところで、ピンクパンサーは獄中の仲間を助けることでも有名です。この場面においては、銃火器を発砲することも厭わない凶暴性を見せます。
そこまでするのなら、助けようとした人物は組織にとっての重要人物なのではないか?そして彼らは「上層部」ではないだろうか?
その仮定の元に、脱獄者をリストアップしました。
脱獄者リスト
2003年 Dragan Mikic(ボス格? 実行役)
2013年5月 氏名不詳(実行役)
2012年 Olivera Cirkovic(元バスケ監督、盗品販売、実行役)
2013年7月 Milan Poparic(実行役)、Adrian Albrecht(誘拐、放火、マネーロンダラー)
マネーロンダラーが1人いますが、大体が強盗に直接関わっています。
(脱獄を図るのは刑務所の堅牢さにも依存するため、評価基準としては有用ではない気もしてきました。)
もしかすると、上層部と実行役は混ざり合っているのかもしれません。
だからこそ「リーダーはいない」ということか?
全てがグラデーションになっており、一元化された指示系統を持たない組織。必要に応じてメンバーが入れ替わる流動的な組織。それがピンクパンサーなのでしょうか。
だとするとそれを1つの集団としてネーミングするのは、はたして正しいのでしょうか。
ピンクパンサー窃盗団 記事リスト
主要参考文献
Havana Marking氏によるインタビュー
https://www.theguardian.com/uk-news/2013/sep/22/pink-panthers-diamond-thieves-documentary
David Samuels氏によるインタビュー
https://www.newyorker.com/magazine/2010/04/12/the-pink-panthers
既存の情報のようですが読みやすくまとまっています
https://www.theguardian.com/uk/2010/aug/23/pink-panther-jewel-thieves