ブラックマーケット調査

・・・すこし手直し中・・・

ピンクパンサー窃盗団②:各地の拠点とコネクション

ピンクパンサー窃盗団その2です。

謎多き集団に、さらに詳しく迫っていきましょう。

今回はピンクパンサーたちの活動を円滑にしている拠点と、盗品の販売経路についてです。

 

詳細になるにつれ、元パンサー等へのインタビュー記事が主な出典となっていきます。リンクをページ下部に掲載しますので、ご興味があればどうぞ。

 

各国に築いた拠点

ピンクパンサーが好む手口「スマッシュ&グラブ」(直訳で「壊して掴む」)は、入念な下準備が必要です。

無暗やたらと銃を乱射するなら話は別ですが、パンサーはそれを好みません。

しかも彼らは本拠地のセルビアモンテネグロから国外に出向いて強盗を行うため、情報収集には国境の壁があります。

そこで必要になるのが国外の拠点です。

 

拠点はイタリア、フランス、ベルギー、デンマーク、オランダ、スイスにあるとの見方が有力です。

中でもイタリアには重要な拠点が集まっており、それには理由があります。

1.イタリア政府の対応が甘かったこと

2.イタリア・マフィアとコネクションがあったこと

 

1990年代から、モンテネグロとイタリアの間ではタバコの密輸が行われていました。

モンテネグロからボートで出発したタバコはイタリア・マフィアによって販売され、ヨーロッパ各国で資金洗浄が行われていたといいます。

さらにイタリア・マフィアは、モンテネグロを避難所として利用しました。

真っ黒なパートナーシップがそこにはあったのです。

ジュネーブの刑事は、「全てのグループはミラノに連絡先かアパートがある」とまで語っています。

 

ところで、イタリアにはマフィア型結社が複数あります。

イタリア紙『La Repubblica』で調べてみたところ、協力関係にあったのは「サクラ・コロナ・ウニータ」のようですね。(購読していて良かった。

「コーザノストラ」、「ンドランゲタ」、「カモッラ」に続く第4のマフィアとして陰に隠れがちな「サクラ・コロナ・ウニータ」ですが、ここで関わってくるとは思っていませんでした。

イタリア南東部を拠点としているグループなので、地理的に有利ではあります。

 

 

盗んだ宝石類の販路

ピンクパンサーの手際の良さは、盗品の処理にも表れています。

美術犯罪の歴史の中で、どれだけの強盗犯が盗品をうまく売れずに泣きを見てきたことか。

いや、痛い目に遭って頂いた方がいいんですけどね。

 

ピンクパンサーの場合は事前に買い手が決まっており、依頼を受けてから強盗に及んでいる可能性が高いようです。

価値の高いものを根こそぎ奪うのではなく、特定の品に狙いを定めているように見えるため、警察は依頼者の存在を強く疑うようになりました。

これを裏付けるかのようなインタビューを、映画監督Havana Marking氏が行っています。

 

インタビューの相手はピンクパンサーから宝石を受け取り、「再カット」して再び流通させる役目の男。

男は自称、元セルビア特殊部隊。何かと血生臭い疑惑の多い組織の出自です。

彼によれば、特殊部隊は特別な人脈を持っているといいます。

 

例えば、ダイヤモンド鉱山のある西アフリカに。さらにベルギーのダイヤモンド加工の街、アントワープ

この人脈を組み合わせることで、奪われたダイヤモンドは西アフリカ産の「合法な」ダイヤモンドとして流通します。

なお、このルートでは最終的にイスラエルに運ばれることが多いそうです。

 

「俺のような人間が居なければ、あいつら(ピンクパンサー)は何もできないんだ」

 

男の言葉からは、ピンクパンサーと闇商人のパワーバランスが透けて見える気もします。

 

他にも、引退したパンサーの口からは次の販路が示唆されています。

それはイタリア、ロシア、イスラエル、オランダ。

残念ながら詳細までは明かされていません。

 

地元の庇護?

ピンクパンサーは、自らの本拠地セルビアモンテネグロでは強盗をしません。

そして本拠地ではパンサー達は比較的自由です。

(あえて「比較的」と引っかかる言い方をしますが、理由は後述します。)

 

ピンクパンサーを認める風土を、政治の腐敗が作りあげたというのが定説です。

 

1990年~2000年にかけて、セルビア・モンテネグロは紛争の責任を求められて先進国から経済制裁を受けました。

さらに国内のエリートによる腐敗政治によって、国民は貧困にあえぐことになります。

経済制裁と腐敗政治は、決して少なくない国民を犯罪に駆り立てました。

 

国民の一部には、「ピンクパンサーは金を流出させたエリート達とは違い、経済制裁を食らわせた憎き富裕国から金をもたらす存在」という認識が確かにあるようです。

 

2010年、ジャーナリストのDavid Samuels氏は、セルビアモンテネグロの警察署を訪れて担当者へのインタビューを行っています。

確かにSamuels氏の文章は、両国共にピンクパンサーの捜査に積極的ではない印象を抱かせます。

とはいえ、2人へのインタビューが国家の総意を表すと解釈するのは早計です。

国内ではパンサー達は「比較的自由」との言葉に留めおくのが吉でしょう。

 

現在では、パンサー達にとっての安全圏となる条件は着実に削がれています。

2007年に展開されたインターポールによるピンクパンサー包囲網と、EU加盟のために自治を強化する必要があるセルビアモンテネグロ

この状況が、パンサー達に有利に働くはずはないのです。

 

 

ピンクパンサー窃盗団 記事リスト

blog.bouhanmemo.com

blog.bouhanmemo.com

blog.bouhanmemo.com

 

主要参考文献

Havana Marking氏によるインタビュー
https://www.theguardian.com/uk-news/2013/sep/22/pink-panthers-diamond-thieves-documentary

David Samuels氏によるインタビュー
https://www.newyorker.com/magazine/2010/04/12/the-pink-panthers

イタリア紙『La Repubblica』より

「第4のマフィア」の隠れ家だったモンテネグロ
https://ricerca.repubblica.it/repubblica/archivio/repubblica/1996/11/11/montenegro-ex-rifugio-della-quarta.html?ref=search

(イタリア語文献は機械翻訳に100%頼っています)

//