12月20日、埼玉県吉川署は住所不詳&無職の男(50)を逮捕しました。
この男はある男性宅に侵入し、物色中に帰宅した男性に暴行を加えたとされています。
その侵入手段は非常に強引で、防犯設備としてよく使われる「格子」を切断するものでした。
格子を切断するくらいなら他の家を狙った方が楽ではないのか?なぜわざわざ格子を切断してまで侵入したのか?疑問が残ります。
そこで今回は、男が格子付きの窓を選んだ理由と、格子は侵入犯にとって無力なのかを考察します。
犯人の手口
12月18日午後7:50頃。
ある男が住宅の一階にある脱衣所の窓格子を切断して侵入。切断には持参した道具を使用しています。この時住人の男性は不在でした。
男が2階で物色していたところ、帰宅した男性と遭遇しもみ合いになり、持っていた工具で頭を殴るなどの暴力を加えたといいます。
男性の妻が110番して男は現行犯逮捕。
「金銭目的で侵入して殴った」と供述しています。
格子を切断した強引な犯行
空き巣の6割は窓から侵入します。
これは窓破りとクレセント錠の開錠が比較的簡単なことが要因と考えられ、慣れていれば20秒程度で侵入できてしまう手軽さがあります。
そこで窓の防犯としてよく用いられるのが格子ですが、本事件では工具で破壊されてしまいました。
よく見かける窓格子。基本的には十分に防犯効果がある
格子の素材、立て付け、タイプが報道からはわからず、犯人がどんな工具で切断したのかも不明ですが、間違いなく一般的な窓破りよりも手間がかかったことでしょう。
どうして犯人はわざわざ格子の窓を狙ったのでしょうか?
なぜ格子のある窓を狙ったのか
本事件で不可解な点の1つです。
空き巣目的であれば格子のない窓を狙う方が簡単で、何よりも犯行を見られるリスクが段違いです。
犯人はなぜ格子付きの窓を狙ったのか、いくつかのパターンが推測できます。
- 家に大金等があり、住人の生活リズムを把握していた
「この家でなければいけない」というケースです。リスクの低い他の家を狙うより、あらかじめ目をつけていたこの家の方が利益が大きいと考えた可能性があります。
金銭の情報を把握していたのなら、当然住人の生活リズムも知っているはずです。本事件の犯人も不在のうちに侵入はできてはいます。しかし帰宅した住人と遭遇してしまったのは想定外だったのでしょうか。
この犯行パターンは、企業の社長と従業員の間でときおり見られるパターンです。社長宅のセキュリティと生活リズムを、悪意ある従業員が把握していた時に事件が起こります。
- 格子の下の窓がいつも無施錠だった
空き巣の2割は事前に下見を行います。もしかすると犯人はこの2割に該当する慎重派だったのかもしれません。そして、何度か格子の下の窓が無施錠であることを確認していた可能性があります。
「格子さえどうにかすれば簡単に侵入できるぞ」という考えのもと、道具を持参して犯行に及んだとも考えられます。
この場合、犯人側が格子の破壊にまつわる知識や経験を有していたことも疑わなければいけません。なにせ他の家の窓破りよりも、格子の破壊を選択したのです。
- 被害者宅の立地上の問題
後にも述べますが、格子といえども絶対に破壊されない訳ではありません。大抵の格子は破壊可能でしょう。
しかし破壊行為には長い時間と大きな騒音を伴うのが普通です。また、破壊のために持ち歩く道具は、窓破りに必要なドライバーよりも悪目立ちするでしょう。あらゆる側面において、窓破りより人目に付きやすいと言えます。
それでも破壊に成功したということは、被害者宅が立地上、人目に付きづらかった可能性も十分に考えられます。
高い塀に囲まれている、近くに住宅がない、工場等が騒音をかき消してくれる…侵入犯がゆっくりと「仕事」できる環境が揃っていたのかもしれません。
格子の防犯効果に疑問?
本事件を知り、「格子には防犯効果が無いんじゃないか」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
その点はモノによりますが、基本的には「効果あり」と捉えて頂いて間違いありません。
ここで言う防犯効果とは、侵入不可能にするという意味ではなく、なるべく侵入に手間をかけさせるという意味です。
絶対に破壊できない格子はありません。破壊するのに時間がかかる、騒音が出てしまう、目立つ道具を用いなければいけない等の理由で侵入犯に狙われづらい、という意味での防犯効果を期待できるのが格子です。
そのため格子は適切な運用を必要とします。
格子のネジ山が露出していたり、人目のつかない場所に格子をかけるだけで施錠を怠ったりしては防犯効果が激減します。
格子のネジ山はドリルでつぶす、より頑丈な網目状の格子を使う、格子の下の窓にも補助錠を付けるといった活用方法がお勧めです。