空き巣は一戸建てだけでなくマンションも狙います。
空き巣の持つスキルによっては、むしろマンションの方が狙われやすい場合も。「集合住宅にわざわざ盗みに入らないだろう」という期待は裏切られてしまうものです。
今回はマンション含め集合住宅の危険箇所をチェック。危険な場所が分かれば、対策もしやすくなるでしょう。
狙われやすい階がある
空き巣が好んで狙う階があることをご存じでしょうか。「上階なら安全」、そう感じている方にはショッキングかもしれません。
最上階とその下が狙われる
マンションの最上階付近は空き巣にとって狙いやすい場所。特に集団での犯行のターゲットとなりやすい条件がそろっています。
窃盗グループの手口は以下の通り。
②実行役が鍵を開錠して侵入&物色。
③住人がエントランスに近づくと、即座に見張り役が連絡。実行役は急いで撤収する。
この連携を行いやすいのが、マンションの最上階付近です。
最上階付近のリスクはさらに身体的な危険にも及びます。窃盗グループに好まれることは、いざ空き巣と対峙してしまった時に「居直り強盗」へ変貌されやすいことを意味します。
居直り強盗とは、空き巣が住人と鉢合わせた時にそのまま脅迫や暴力を用いた強盗になること。単独の空き巣よりも窃盗グループの方が居直り強盗になる可能性が高いため、窃盗グループに狙われるリスクはそのまま身の危険に繋がると言えるでしょう。
最上階は特に10階程度のマンションで狙われやすくなるというデータがあります。
屋上からロープを垂らし、窓を破って侵入する手口も確認されています。最上階だからといってドアや窓の防犯を怠るわけにはいきません。
やはり1階は入りやすい
多くの方の感覚どおり、1階は狙われる可能性が高いです。
1階の侵入経路は主に窓。近年の空き巣が好む、窓破りにて侵入されやすくなります。また、最上階を狙っていた窃盗グループも逃げやすさを考慮して1階を選ぶことが増えていると言われています。
1階の防犯性能は窓周囲の環境次第です。高い塀、乱雑に生い茂った植物など、視界をさえぎるものがあればあるほど空き巣に好まれます。
逆に見通しの良い塀(格子状の塀など)や整った庭、そして補助錠や防犯ガラスなどで補強した窓があれば空き巣をはねのけることもできるでしょう。
1階と同程度のリスクがある2階
4階建て以上の中高層マンションの場合は、2階の空き巣被害も1階と同程度報告されています。
空き巣は2階程度の高さであれば、ちょっとした足がかりでベランダに登れてしまいます。そしていったんベランダに侵入できれば、外から見えづらい状況下でゆっくりと窓ガラスを割ることが可能。空き巣のスキル次第で1階よりも危険になり得るのが2階です。
空き巣は雨樋から伸びる、竪樋(たてどい)も利用して2階に登る
屋外にゴミ捨て場などの小屋や倉庫、さらには脚立や自転車のような道具が置いてあれば、十分な足がかりとして利用されます。2階に住む場合、できれば上りづらい環境であるか、そしてベランダが隠れ場所になってしまわないかチェックしたいところです。
エントランスのセキュリティ
今ではエントランスに防犯カメラやオートロックがあるマンションも少なくありません。充実したセキュリティに全てお任せしたいところですが、利用者の注意が必要となるポイントはたくさんあります。
オートロックは過信できない
皆さんはエントランスのオートロックを通過する方法をご存じでしょうか?住人が通ったすぐ後に飛び込むという方法もありますが、あからさまに怪しいこの方法をとる空き巣は少数派でしょう。
・宅配業者を装って住人に開けてもらう
現在も頻繁に行われている手口。宅配業者のお世話になることが多いこのご時世、身に覚えがなくてもつい開けてしまうことで発生した事件は多いです。共用エントランスのロックを外した本人が被害に遭うとは限らず、自分が開錠したことによって他の住人が被害に遭うことも考えられます。
2020年現在、ガス点検や宅配業者を装った犯行が目立っています。危険人物を見分けるために、宛名や差出人の確認、場合によっては配達人の身分証明を確認する必要も出てきています。
・ロック操作盤の番号を盗み見る、汚れから番号を推測する
テンキー式のオートロックの場合、番号を見破られることが最大のリスクです。しかし番号をかすめ取るのはそう難しくありません。住人が操作している所を盗み見たり、キーの汚れから番号を推測するといった方法で簡単に把握できてしまいます。
番号の定期的な変更や、テンキーの位置が変化したり盗み見防止機能がある操作盤を導入するといった対策が考えられます。
画像引用:美和ロック 電池式電動サムターンユニット『PiACK II』 番号盗み見対策が施されている
・ロック装置自体の破壊や無効化
オートロックの機器に詳しい者にとっては、装置の無効化は造作もない事と言われています。過去にあるホテルのオートロックシステムを無効化する方法が犯罪グループに出回ったこともあります。技術者を取り込んだ犯罪グループにとっては、デジタルなセキュリティはねらい目でもあるのです。
このように、オートロックは決して過信できません。むしろ、「オートロックが自分たちを守ってくれている」という慢心が身近な防犯をおろそかにさせ得る危険要因になりさえします。
エントランスの防犯はバッチリ。でも裏口は?
エントランスの防犯設備がしっかりしていても、裏口や非常階段からの侵入が容易な物件も。マンションの防犯性能を把握するなら、正面エントランス以外の開口部のセキュリティもチェックすると良いでしょう。
マンションならではのリスク
マンションには集合住宅であるがゆえのリスクも潜んでいます。
同じタイプの鍵が使われている
基本的にマンションは全部屋同じタイプの鍵が使われています。空き巣にとっては同じ不正開錠の手口で多くの部屋を回れるおいしい場所なのです。効率の良さから、窃盗グループに好んでピッキングされたケースもあります。
現在では鍵やドアの防犯性能が高まり、侵入にかかる時間が増えたため大規模な被害は減少しています。しかし中には古い鍵やドアがそのまま使われている物件もあるため、要チェックです。
間取りも同じである
鍵と同様に、間取りも同じになってしまうのが集合住宅。これは空き巣にとって効率的な犯行を助ける要因になります。
あまり考えたくはない事ですが、同じ住人が忍び込んで物色しやすい環境とも言えるでしょう。生活ペースを把握されやすいこともあり、隣人による空き巣被害も防犯上のリスク要因として計算しなくてはいけません。
侵入してしまえばゆっくりと「仕事」できる
特に中高層マンションでは、内部に入ってしまえば音も視線も届きにくい隔離空間として空き巣を守ってしまうこともあります。少々時間がかかったり音が生じたりするドアや窓の開錠もゆっくりと行えてしまいます。
外界から隔離されているということは、空き巣に限らず性犯罪や暴力もしやすい環境となります。防犯カメラが見張ってくれていても、後先考えない犯罪者には抑止効果が期待できません。
安全性の高い「防犯優良マンション」
マンションの空き巣対策について解説しました。マンションならではの意外な盲点があることや、絶対の安全はないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。同時に、多くの注意点を前に途方に暮れてしまった方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、もし防犯性能に重きを置きたいのであれば「防犯優良マンション」を選ぶことをお勧めします。
防犯優良マンションは照明、強固なロック、死角の排除などが一定の基準を満たしていることを意味しています。認定のハードルは決して低くなく、また定期的な認定更新が求められます。
認定されている物件は多くはありませんが、お住まいの都道府県の防犯協会連合会ホームページなどから調べることも可能です。興味がおありの方は、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。