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クレセント錠に防犯効果はない?空き巣の嫌がる窓づくり

実は危ないクレセント錠

 

 「クレセント錠には防犯効果がない」と聞いたことはありませんか?

「錠」と言うのに効果なしとは不思議な話です。
しかし、確かにクレセント錠の効果は極めて限定的と言えます。

内側からしっかり窓を固定するのに、どうして効果がないのでしょうか。
それは空き巣がクレセント錠への対策を熟知しているためです。

今回は空き巣の目線からクレセント錠の脆弱性について考えます。手口がわかれば、自然と効果的な対策を講じることが可能となるでしょう。

クレセント錠は本当に空き巣対策にならない?

防犯効果はない

空き巣が目当ての家に近づいたとき、窓越しに見えるクレセント錠。実は空き巣にとってこれほどたやすく開けられる錠はありません。

空き巣は20秒足らずで窓ガラスを割り、クレセント錠を開錠するスキルを持っています。

わざわざ広い面積を割る必要はありません。クレセント錠の付近に拳が入る程度の穴を空ければ十分なので音も小さく、近所の人の耳にも届きにくいでしょう。

空き巣に割られた窓

画像引用:有限会社水谷硝子店

 クレセント錠が効果を発揮するとすれば、それは通りがかりの空き巣に対してのみ。無施錠の窓やドアを狙う、機会犯的な空き巣なら諦めてくれるかもしれません。

とはいえ、空き巣の機会犯はどのくらいいるのでしょうか?
参考になるデータを見てみましょう。

下見の有無の割合

出典:(社)日本都市計画学会 都市計画報告集No.8 2009年8月

 下見しなかった者が約8割というデータです。意外と多くて安心しませんでしたか?しかし、8割すべての空き巣にクレセント錠が有効というわけではありません。

下見をしない機会犯でも、窓ガラスを割って侵入することは少なくありません。何より、このデータは拘置所の収容者が対象です。入念に下見をし、逮捕されないでいるプロの空き巣は反映されていないことになります。

この年の侵入窃盗罪の検挙率が50%程度であることが、この統計を鵜呑みにできない大きな要因です。

もっとも、以下のように侵入窃盗を決意させる要因として「無施錠」が27%を占めているため、(当たり前ですが)クレセント錠をすることによる効果はゼロではありません。 

空き巣の侵入手段

出典:警察庁 平成30年の刑法犯に関する統計資料

しかし常習犯となると話は違います。何度もターゲットの下見をして、見つからないように計画を立ててから犯行に及びます。そんな常習犯にとってクレセント錠は全く脅威ではありません。 

空き巣が下見するポイントの一例

・周囲から見えにくいか
・どんな施錠がされているか
・住人がいない時間帯
・住人の家族構成
・近所の治安への関心度

ここまで入念にチェックされてしまうと、外から丸見えのクレセント錠はむしろ「この家は入りやすい」というサインにもなりかねません。

また、プロの空き巣はガラスを割らずにクレセント錠を開ける方法も心得ていると言われています。痕跡の残らない開け方をされた場合、家の住人は「鍵を閉め忘れたかもしれない」と考えるかもしれません。

統計上の「無施錠」には、プロの空き巣による未知の犯行が含まれている可能性もあるのです。

 

クレセント錠の本来の役割

本当の意味を知ろう

クレセント錠は鍵ではないと言いましたが、ではどんな役目を持った部品なのでしょうか?

これは少し豆知識的な話。窓の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

古くから日本では、木製の窓が使用されてきました。この木製窓を固定する道具として登場したのが、「ネジ締まり」です。

ネジ締まり

画像引用:たましま設計施工社

これは名前の通り、ネジを回すようにして引き違いの窓を固定する道具です。クルクルと回す感触が懐かしいという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

時代が進むにつれ、木製の窓はアルミ製などに置き換わりました。その頃に登場したのが「クレセント錠」です。

クレセント錠は三日月形状となっており、窓を強く引き寄せて密閉する効果があります。ネジ締まりにはできなかった、部屋の気密性や防音性を向上させることができる優れものと言えるでしょう。

非常に機能的な部品ではありますが、防犯の観点から見ると決して褒められたものではありません。ワンタッチで開けられてしまうため「防犯効果はほぼない」と不名誉な評価を下されています。

クレセント錠は、木製窓時代のネジ締まり以上に空き巣にやさしい部品となってしまったのです。

空き巣の手口が洗練された現在では、もはや鍵としての機能は期待されていません。あくまで気密性を確保するものであり、錠ではないとして「クレセント」と表記する建具メーカーもあるくらいです。

 

窓の防犯性能を高めるには?

防犯性能を高める

これまでクレセント錠の脆弱性についてご紹介しました。しかし多くの方が、「うちにはクレセント錠しかない」「賃貸だからリフォームできない」というお悩みをお持ちではないでしょうか。

窓が無防備であることは、財産や身体に害がおよぶ直接のリスクとなります。

次に、窓の防犯性能を高める方法をお伝えします。

 

ロック機構付きのクレセント錠への交換が簡単

クレセント錠にはロック機構が合わさったものがあります。これを採用することで、仮に窓を割られてもクレセント錠を開錠できず空き巣をあきらめさせる効果があります。

基本的にはドライバー1本で現在のクレセント錠と交換でき、賃貸やDIY初心者の方にも使いやすいものです。

ロック機構付きクレセント錠には、主に以下の2タイプがあります。

鍵付きクレセント

鍵付きクレセント

 画像引用:株式会社あんしん壱番 商品紹介ページ

クレセントの操作に付属の鍵が必要なタイプです。鍵を無くさない、かけ忘れないことが前提となりますが、ロック機構のないクレセントより格段に防犯性能はアップします。

基本的に手軽にDIYできますが、クレセントを受ける「受け金具」との距離がピッタリ合わず、高さ調整用のスペーサーなどでの軽い位置調整が必要となったケースが散見されます。サイズの確認やスペーサーが付属しているかを確認して購入しましょう。

ダイヤル鍵付きクレセント

ダイヤル鍵付きクレセント

画像引用:The・Kagi堂 商品紹介ページ

指定の番号にダイヤルを合わさないと開錠できないタイプ。ショップによっては番号を指定できる所もあります。複数購入の場合は、それぞれの番号をバラけさせる注文が可能な場合もあり、安全度の向上に役立つでしょう。

 

補助錠と組み合わせてさらに防犯性能アップ

さらに防犯性能を高めたい、またはクレセント錠の交換が難しいという場合は、補助錠を使うことがお勧めです。

補助錠の多くは両面テープでサッシや窓に貼りつけ、窓をロックするもの。十分DIYで可能なレベルですが、ワンタッチでロックと解除を切り替えられるため、単体での防犯性能は高いとは言えません。

しかし空き巣にとっては、クレセント錠を外し、さらに補助錠も外さなければいけないという状況がプレッシャーとなります。

補助錠は下の画像のように、できるだけ高い位置への設置をお勧めします。空き巣が立ち上がらなければ届かないため、人の目に付きやすくなります。 

ワンタッチ補助錠

画像引用:株式会社あんしん壱番 商品紹介ページ

この補助錠は、窓ガラスに貼るタイプ。屋外に向けて「防犯装置設置」のステッカーでアピールすることもできるため、抑止効果が期待できます。

ただ、「こんな簡単なロックで本当に効果があるの?」と心配になる方も多いのではないでしょうか。

実際の効果について知るには、侵入犯の声を聞くのが一番。侵入をあきらめる要因についての調査結果がありますので、確認してみましょう。

 

都市防犯研究センター jusriリポートによれば、侵入犯が犯行をあきらめる要素ベスト5は、以下の通りです。 

1位 声をかけられた、顔を見られた
2位 ドアや窓に補助錠が付いていた
同率3位 犬を飼っていた・警報装置が付いていた
同率5位 防犯カメラ・面格子の設置

 

補助錠は2位。犬や防犯カメラを上回るプレッシャーを与えることができると言えます。

ただし、補助錠の種類までは特定できていないため、多少の慎重さをもってこのデータを参考にする必要があるでしょう。

また、犬は手なずけることができるため、特段脅威に感じていない空き巣もいます。同様に補助錠も、それ単体ではプロの手にかかれば脅威とはなり得ない可能性もあると考えるべきでしょう。

 

どのくらいの対策をすれば十分なのか?

どのくらいの対策が必要?

では、どのくらいの対策をすれば良いのでしょうか?自宅を要塞にするわけにもいかない以上、ある程度の目安が欲しい所です。

ここでは参考としてお勧めの目安を、2つご紹介します。

 

防犯性能の高い建物部品を参考にする

目安の1つが、「防犯性能の高い建物部品」の認定項目を満たす方法。

引き違い窓の場合は、以下の条件を満たすことで防犯性能が高いと判断されます。

・ロック付きクレセントと補助錠の2点ロック
・防犯ガラスまたは防犯フィルムを使用
・窓枠に外れ止め対策がされている
・窓の合わさる部分が針金などを通さない構造になっている

 

この項目を満たした窓がメーカーから販売される場合、「防犯性能の高い建物部品」としての箔を付けることができます。一般的には下の画像のようにCPマーク(Crime Prevention)が貼りつけられて、その防犯性能の高さを保証します。

CPマーク

画像引用:サッシ.net

防犯性能が高いと判断する基準は、道具を使っても5分以内に侵入できないこと。5分以上かかると空き巣の7割があきらめるというデータに基づいています。

認定の際は、実際に試験員が道具を使って侵入を試みる試験を行います。「防犯性能の高い建物部品」は、かなりの信頼性のある建物部品と言えるでしょう。

サッシやガラスを、これらの部品に完全にリフォームしてしまえば完璧です。しかし費用がかさむため難しい場合もあるかと思います。

 

DIYで対策するなら以下の3点を満たしておくのがお勧めです。

・ロック付きクレセントへの交換
・補助錠の追加
・防犯フィルムをガラス全体に貼り付ける

 

これで、「防犯性能の高い建物部品」に近い防犯性能を手に入れることが可能となります。

 

防犯モデルマンションを参考にする

もう1つの目安は、防犯性能が高いマンションに対してお墨付きを与える「防犯モデルマンション」制度です。

こちらの制度でも、窓について満たすべき項目を参考にすることで防犯性能を高めることが可能となります。

部品単位で見る「防犯性能の高い建物部品」制度よりも、住戸の窓全体を広い視野で見た制度であるため、トータルな防犯対策には役立つでしょう。

以下が窓についての項目です。

 ・接地階および共用廊下に面する窓は、ロック付きクレセントや防犯ガラスまたは防犯フィルムによる破壊対策が必須
・バルコニーに面した窓について、侵入が想定される階においては、ロック付きクレセントと補助錠による2点ロック、さらに防犯ガラスが望ましい(侵入が想定される階とは、接地階、接地階の直上階、屋上の直下階等のことを言う)
・出入に用いない窓の場合、面格子を設ける
・短辺20cm未満の窓は侵入の恐れのない窓として扱い、防犯対策は必須ではない

 

多少あいまいな表現が多いように感じられたかもしれませんね。これは、都道府県によって基準が微妙に異なり、かつ現場を見て判断されるものであるためです。

例えば、侵入が想定されるバルコニーは付近の建物の状況によっても変わってきます。隣の建物の非常階段から飛び移ることが可能ならば、そこが何階であろうと侵入が想定されると判断できます。

とはいえ基本的に「防犯性能の高い建物部品」と同じ窓やサッシであれば満たすことのできる基準がほとんどです。かつ、出入に使用することのない窓は面格子などで保護することで、トータルな防犯性能の向上も視野に入れています。

自治体によっては、バルコニーの窓には侵入警報装置の設置を推奨している所もあります。

空き巣にとってバルコニーは、いったん身を隠してしまえば外から見えづらく、ゆっくり作業ができてしまう場所です。そのため、いっそうの警戒が必要とされているのです。

 

まとめ

クレセント錠は、空き巣の手口が巧妙化した現在では防犯効果が期待できません。

本来ならば窓自体を「防犯性能の高い建物部品」として登録されたものに取り替えてしまう方法が理想ですが、その登録基準にならって以下のポイントを対策すれば防犯効果が高まります。

・ロック付きクレセントと補助錠のダブルロック
・防犯フィルムでガラスを補強

出入りを想定しない窓であれば、面格子を設置しても良いでしょう。

空き巣が好んで侵入経路とする窓。それなのにクレセント錠しかない方は、早めの対策をお勧めします。まずはロック付きクレセントへの交換から始めてはいかがでしょうか。

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