ブラックマーケット調査

・・・すこし手直し中・・・

スマッシュ&グラブの脅威 /TEFAFマーストリヒト襲撃事件(前編)

1年に1度、オランダで開催されるアートフェア「TEFAFマーストリヒト」。

200を超えるギャラリーが参加し、それぞれが自慢の品を売り出すイベントです。巨匠が描いた名画や古代遺物、そしてジュエリー。

貴重なアイテムが並ぶ光景は、さながらミュージアムのように感じられることでしょうね。

富裕層はこぞって自家用ジェットで訪れ、ルーヴルなど大美術館の代表も参加するといいます。まさに大規模イベントです。

 

煌びやかな世界をギャングがにわかに騒がせたのは、昨年6月のこと。

そこで展開された出来事は動画で残されており、誰でも見ることができます。(TEFAF robbersでググれば早い)

武装集団の犯行は典型的な「スマッシュ&グラブ」でした。単純で素人臭いこのやり方が、セキュリティの敗北をもたらしたのです。

 

金の額縁と花で飾られた館内にアラームが響く中、武装した4人の男は意も介さずに仕事をこなしていました。

スレッジハンマーで強化ガラスを叩く男1人、その周りを囲む男3人。彼らの手にはハンドガンか、短機関銃のように見える物が握られています。

犯行を止めようと近づく職員に、銃口が向けられる場面もありました。犯人に分別があってよかった。負傷者は出ていません。

代わりに目的は果たされたようです。

ショーケース内のジュエリーを奪った犯人たちは逃走に成功し、今も行方をくらませています。

 

「スマッシュ&グラブ」、直訳で「打ち壊し、掴む」。このやり口が問題です。

通常、盗みを働く者は犯行中に見つからないことを念頭に置きます。深夜にこっそりと無施錠の、もしくは開錠した窓から忍び込み、音を立てずに目当ての物を持ち去る。

ところがセキュリティが向上した現代では、この方法は通用しなくなってきました。代わりに目立ち始めたのが、極端に強引な方法です。

白昼堂々、人が居ようと居まいと関係なく、あらゆる障壁をぶち壊して奪う。そして犯人が逃げ去った後に警察は到着するのです。

 

犯罪の世界において暴力の支配は強大です。たいていの計略は、暴力の存在を前提としています。

武装強盗たちは犯罪における暴力の絶対性を知らしめることに成功してしまいました。

 

TEFAFマーストリヒトは今年も開かれます。開催は3月11日。

今回は金属探知機と手荷物調査がセキュリティに加えられるといいます。もちろん公表できないシステム更新も行われるでしょう。

一方、警察は今も襲撃犯を捜索中です。

運営にのしかかるプレッシャーは、察するに余りあるほどでしょう。

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