ブラックマーケット調査

・・・すこし手直し中・・・

芸術への情熱を謳う犯人 /ピカソ等盗難事件

情熱が高じて法を犯すなら、それはもはや偏執狂かと。

ストーカー犯罪を例にするとわかりやすいでしょう。他人から見れば常軌を逸した行為が、そこでは繰り返されています。

 

絵画への情熱を謳った窃盗犯は何人かいますが、今回の事例もその1人です。

www.artnews.com

2012年、ギリシャアテネ・ナショナルギャラリーから2点の絵画が盗まれました。

犯人は何度も警報を作動させ、装置の誤作動と思い込ませることで安全に絵を盗んだとされています。

この事件は「世紀の強盗」と呼ばれました。犯行のスマートさと、絵の価値を踏まえてそう呼んだのでしょうか。

ピカソの絵は、ナチスへの抵抗を称賛してギリシャに送られたものでした。

 

事件から9年後、49歳の男が逮捕されました。彼の供述によって事件の謎が解き明かされていきます。

何か月もかけて美術館の警備システムを調査したこと、盗んだ絵のうち1枚は破壊したこと、そして残る2枚の隠し場所について。

さらに彼は、美術への情熱が自らを犯罪へ突き動かしたと語りました。犯行の6か月前からは頻繁にギャラリーを訪れ、作品を盗みたいという欲求に苦しんだといいます。本当だとしたら恐るべき情念です。


パブロ・ピカソ『女の頭部』(1939) 茂みの中で発見された。

売買目的ではなく好きだから盗んだという言い訳は、裁判官の心証を良くするための方便に思えてしまいます。

オランダの美術探偵は、犯人は国際的な密売グループの1人であると主張している。事実なら、情熱による犯行とは言えません。

犯人が破壊したと語る絵は、盗難後、フィレンツェのオークションハウスのサイトに掲載されていました。出所を求めると消えたといいます。怪しい匂いがしますね。

 

盗んだ動機を示す物的証拠は存在しません。

結局、犯人の心の中はわからないままです。

 

私は、情熱による犯行の存在を否定しません。

モナ・リザを盗んだイタリア人、ビンチェンゾ・ペルージャは美術犯罪を語る上で欠かせない人物です。

彼はルーヴル美術館にあるモナ・リザを盗みました。動機は金銭ではなく、ダヴィンチが生まれたイタリアにモナ・リザは居るべきだという情熱でした。

ただし、やはり情熱による名画盗難は一般に理解されないのでしょう。売買を図った形跡があるとの主張や、今ルーヴルにあるモナ・リザは偽物だという冗談半分の噂も出回りました。

 

いつだって人の心はわかりません。

統計処理で分類することや、生物学的な知見で反応を予測することはできます。

しかし本当の意味で人の心を知りたいなら、本人になるしか手段はないんでしょうね。

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