ブラックマーケット調査

・・・すこし手直し中・・・

奪われた本はどこへ行く /ビクトリアの希少本盗難事件

盗まれた希少本を買い取るのはどんな人物だろうか?

カナダのビクトリアで起きた盗難事件を知って、あらためて考えました。

vancouverisland.ctvnews.ca

襲われた書店「Russell Books」の自慢は、ショーケース内に並んだ希少本だといいます。それが奪われてしまいました。被害総額は5万5千ドルにのぼります。

犯人のうち1人は翌日には逮捕され、本は取り戻されました。書店としてはひとまず安心という所でしょう。

しかし疑問は残ります。犯人は本をどう処分するつもりだったのでしょうか?

 

希少本を売るには、しかるべき場所へ持ち込む必要があります。17世紀のガリレオの本をブックオフに持ち込む人はいないでしょう。

しかるべき場所は盗品を掴まないように対策しています。古美術商やオークションハウスなど、専門家であればあるほど慎重なはずです。

現在では盗難の情報はネットで即座に拡散されます。消えた本のカタログ「Missing Books Register」もその1つです。

つまり、盗難が発覚した時点で買い手を見つけるのは困難になります。

missingbooksregister.org

この問題をクリアするのが内部犯行。

図書館の職員が数年かけて本を盗み出すケースが典型です。盗難は気づかれず、「元」蔵書であったことを示す印を押しておけば売却のハードルも下がる。

それでも所詮は延命措置にしかなりません。いずれ点検作業や人事異動によって明るみに出る運命です。

 

安全な方法は存在しないのでしょうか?

もちろんそんなものは無い方が良いのですが、1つだけあります。

「盗品コレクター」なる人物の依頼を受ける方法です。

 

盗品コレクターとは、希少な品を手段を選ばずに欲する人物のこと。そして手に入れた品は自分だけの秘密の部屋にコレクションします。

決して売ることはせず、他人に見せびらかすこともしない。

世界有数の希少品を持っていながら、それをたった1人で愛でるだけの孤独なコレクター。彼の部屋には、きっと行方不明のレンブラントも飾られているでしょう。

 

そう、盗品コレクターは架空の人物です。これまでに確認されていない、人の想像が生み出す黒幕とでも言いましょうか。

美術品が闇に消えるたび、存在を囁かれては一笑に付される理外の空想にすぎません。

(もしいるのなら知りたいものです)

 

数百万円に届き得る名の知れた盗品を持つリスクを、鑑賞する「だけ」の欲求が上回るでしょうか。

 

ただし絶対に存在しない、というのは悪魔の証明ではあります。

もし盗品コレクションに成功している人物がいるなら、それは観測できません。

Missing Books Registerに残り続けるいくつもの本が、ありえないはずの人物を幻視させるのも無理はない…ような気もします。

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