2023年1月16日は、きっと忘れられない日になるでしょう。
マフィア発祥の地シチリアで、「最後のゴッドファーザー」が逮捕された日だからです。
マッテオ・メッシーナ・デナロは30年もの間、当局から行方をくらましていました。それは彼をかくまう協力者が無数にいたことを示しています。
彼の支配力の強さは明確ではありませんが、隠れ蓑に困らない程度には権力があったと言えましょう。
2007年に先代のボスが逮捕されてから、メッシーナ・デナロはシチリア・マフィア「コーザ・ノストラ」の実権を握っていたとされています。
最後のゴッドファーザーと呼ばれるゆえんは、マフィアのピラミッド型構造がメッシーナ・デナロの代には崩れかけていたからです。
重大な意思決定を行う最高幹部会、沈黙の掟「オメルタ」。
シチリア・マフィアを秘密結社たらしめるこれらの要素は機能不全に陥り、もはやかつての勢いを失いました。
メッシーナ・デナロの逮捕を目の当たりにし、シチリアに巻き起こる拍手喝采。それでも彼に奪われたものの多くは二度と帰りません。
メッシーナ・デナロが関与した事件の中で、ただ1つだけ、ウフィツィ美術館の爆破事件についてのみ触れたいと思います。
ジョット・ディ・ボンドーネ作 『マドンナと子供』(1295年頃)
損傷を受けた絵の1つ。
爆破事件は1993年に起きた。ちょうどマフィアの大物が逮捕され、あまりにも強力な拘禁制度が彼らを苦しめたタイミングのことです。
国家の攻勢に対するマフィアのアンサーは、テロリズムでした。
マフィアがなぜ美術館を爆破したのか?その理由は単純明快です。
政府への抗議、力の誇示、そして裏切り者予備軍への圧力。
武力をいかなるものに対しても向けられるというメッセージは、人々を萎縮させます。ウフィツィ美術館は、フィレンツェの街並みごと世界遺産に登録されていました。
国を象徴する文化は、何らかの暴力的アピールに利用されるリスクがあります。
タリバンは偶像崇拝の禁止を叫び、バーミヤン像を破壊しました。世界中に配信した爆破の動画は、言うまでもなく脅迫を意味します。
ナチスはユダヤ人が作成した美術品を集め、晒し、燃やしました。「我々は、あなたの子供を有害なものから守る」という言葉を添えて。
マフィアの文化破壊が有効打だったかどうかは、現状を見ればある程度は察する事ができます。明らかに失策でした。
最後のゴッドファーザーが逮捕された今、マフィアによる暴動は確認されていません。
これもまた、シチリア・マフィアがかつての力を失っていることの証左なのでしょう。